#手鞠花の記

☆は はてなでもらえるけれど もう少し探そうよ

彼女は「○○円の価値がある」と言った

銭湯でのはなし

 旅の途中で、ある銭湯に立ち寄った時のことだ。大きなお風呂で身体を伸ばしていたら、同じお風呂に貴婦人らしき女性がやってきた。なんとなく、人生の酸いも甘きも潜り抜けてきたような人なのかなと思った。当たり前の話だが、銭湯の中ではお金持ちも貧乏人も老いも若きも関係なく、すっぽんぽんである。

 彼女は私に「ここは本当にいいところだね」と言った。「このお風呂は1500円の価値がある。私は昔から温泉が好きでね、○○や○○(←有名な温泉地だったが、忘れた)にもよく行ったんだよ。でも遠くてね、電車に乗って○時間かかるでしょ」

 私は相槌を打とうと「そうですよね、確かに安いですよね。(400円だし)」と言った時、私の見間違いでなければ、彼女の表情が一瞬強張ったような気がした。

 その後、何も無かったように髪や肌の話をして、のぼせた私はお風呂から上がった。ゆっくり出来たし、お風呂も気持ちよかったし、話しかけてくれた貴婦人も感じの良い人だった。

 でも、あの時私が「安い」って言ったこと、彼女は気に障ったのだろうか。

「価値がある」と「安い」

 「安い」は褒め言葉、だと思っていた。もっと言えば豊かさに近いかもしれない。

 ダイソーで買い物をすれば沢山買い物をした気持ちになれるし、普段鶏肉や豚肉しか食べない家でもスーパーで牛肉が半額になったらその日は牛肉が食べられる。じゃあ、私が住んでる街の最低賃金はいくら?



 安さを売りにするお店や話題以外では、「安い」って簡単に口に出すのをやめようかな。

 そろそろ頻繁に「すごーい」って言うのも恥ずかしくなってきた。

 言ってることは同じだけど「1500円の価値がある」「値段の3倍の価値がある」の方が、そのものの価値を認めてる感じがする。

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 旅の恥はかき捨て。でも何となく、自分が普段軽々しく使っている言葉が、自分の人生を方向付けてる気がして、その日は銭湯で会った貴婦人の顔がなかなか心の中から消えなかった。